「感涙座談会」の「まるでこの世のものと思われないような」「浄福感」や、「招魂の御儀を拝して」の「魂の底に徹するやうな深い感激」の世界からは、日本軍の戦争がもたらした「血の海」のイメージが完全に抹消されている。まさにそれが「昇華」の意味である。戦争のおぞましいもの、悲惨なもの、腐ったものすべてが一切拭い去られ、土着的な「懐かしさ」をともなった独特の「崇高」(サブライム)のイメージが作り出されているのである。*1

このサブライム、戦時下の皇族写真(『写真週報』所収)に共通したものを感じる。


靖国問題 (ちくま新書)

靖国問題 (ちくま新書)

*1:高橋哲哉、『靖国問題』、筑摩書房、2005年、33頁。