small planet
すし詰めの車内で身動きが取れないと、気晴らしにつり革広告を眺めてしまうのはごく自然なこと。だからこそ企業は広告を出すわけだけれど、最近目に留まるのはシティバンクの広告に使われた本城直季の『small planet』シリーズ。世間が言うほど興味を示していたわけではないが、さすがに長時間みせられると、いくつか思うところがでてくる。
まず、この写真がミニチュアに見えるのは何故?という問いからはじめてみる。たぶん誰もが最初思うことだろうから。たいていの場合、ミニチュアを現実の場面そっくりに映し出すことが求められるけれど、本城の写真はその逆を目指している。「真実らしさ」ではなく、「贋物らしさ」。ではどうすれば作り物に見えるだろう?
- 「あおり」を使って空間を狭くしていること、そして被写界深度を極力浅くしていること。
- 垂直線の構図をできるだけ避けること。
- 彩度を上げ、コントラストを強めてパステル調の画面をつくりだすこと。
- 遠近法の構図をできるだけ避けること。(※*1)
思えばナダールやジェイムズ・ウォレス・ブラックの気球写真を彷彿とさせるのだけれど、そこで「なにかミニチュアっぽく見えるな」という部分をさらに強調し、現代風にアレンジしたのが本城の写真ということか。
杉本博司の「ジオラマ」シリーズは現実に限りなく近づきつつも、現実と一致する手前で踏みとどまる。そこで自らがジオラマであることを露呈させるが、何か境界線を跨いだ状態を見せられたように、現実と虚構どちらともいえない曖昧さを持ち合わせている。本城の写真も、杉本とは逆側からの“跨ぎ”によってこの感覚を引き起こさせる。しかし本城の写真は杉本のようにコンセプチュアルな深さとは別物のようにみえる。どこか浅い。
浅くて可愛いミニチュア写真、「に見える」、ランドスケープ。ミニチュアに見えることは「可愛い」ということにも関わってくる。
underconstructing...
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