ターナー賞

一ヶ月前の話で恐縮ですが、2006年のターナー賞がトマ・アブツ(Tomma Abts)に決まったようです。画家と呼べる人物が受賞したのは8年ぶりだという。サーチにしろテートにしろ、「絵画復権」の完了を宣言したような印象は受けるけれど、ノミネート作家を見る限りだとアブツが受賞かなぁと思っていただけに、番狂わせはなかったというべきなのか。
でも2005年受賞のサイモン・スターリングの方が確実に面白かった。


  

アブツは比較的明度の低い色彩で幾何学的な形態を描いているドイツ出身の作家で、何重ものレイヤーを重ねて浅浮き彫りのような、オプティカルな要素を引き出している。未来派、サイケというよりかはイスラム神秘主義を思わせるけれど、それほど画面が閉じていない。初期から一貫している縦48×横38cmのフォーマットはかなり小ぶり。まとまった数を並べることでこの作家のよさが引き出されるような気がするのだが、あいにく日本ではそれほどの数を拝めないのが残念なところ。