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さて、今日はリュック・タイマンス。
WAKO WORKS OF ARTで開催中の個展を、
仕事切り上げて閉廊直前に行って来ました。
うちのギャラリーの米田くんも来ていてばったり出会う。
キャンバス後張りなんじゃないのか、と問われたけど、
タイマンスでそういう話は聞いたことないっす。
いやいや、ろくにタイマンスのこと知らないだけです。
実際今回が実物初見だし…。すんません。
この作品が一番印象に残っている。ギャラリーに入ったときに妙な違和感を感じたのだけれど、画面が斜めに、下部が前にせり出している感じがして、「まさか下の部分を固定してないんじゃ?…いやそんなことあるわけないし」なんて思いました。タイマンスは写真をもとに描くことが知られているけど、斜めに撮ったり「あおり」ぎみに撮ったりした写真を使ったんだろうか?タイマンスにしては構造が複雑に描かれているし、気になる一品。今この作品を画像で見ているわけだけど、上記のような感覚は絵画にしか感じられなかった。ちょうどナンシーを読んだばかりだったので、キリストの復活、《ノリ・メ・タンゲレ》の一説がふと蘇る。「それは、『私は死んだ』と言うためには〔私は〕『復活』しなければならないと、自然的驚異に結びついたなんらかの宗教による表象がかたっているのと同じことである」。
Ignatius van Loyolla, 2006.
かの神学者、イグナティウス・ロヨラの頭部。イエズス会の創設者です。今回のテーマは「Restoration」、回復、復活、修復の意。ここではイエズス会だから「教皇権復興」か。プロテスタントの宗教改革に対する反宗教改革の旗手として世界規模にわたる布教活動、そしてキリスト教圏内での異端審問を推し進める。俗に言う「魔女狩り」がヒートアップした原因ともなりました*1。ロヨラの絵、実際接近して見てみるとほとんど素描に近く、フランスのアカデミーでいえば、完成作品に使用する部分的要素となる「油彩スケッチ」に該当するでしょうか。「油彩スケッチ」には2色から3色の褐色系絵具、およびグレースに使用するような溶き油を多量に用いた黒を使う*2。タイマンスは薄いグレーと薄紫(勘でしかないけど、コバルト・バイオレットに2割程度のシルバー・ホワイトを混ぜた感じ)をよく使っているけど、ロヨラの頭部はほぼグレー一色で描かれている。この聖人の厳格さが顕れているともいえるし、タイマンスが評価された理由は「具象的表現における感情の排除」だったから、イエズス会士の肖像は感情ではなく「意志」の表象として描かれていると説明することもできる。だけど、それは本当だろうか?むしろ、感情はこの人物にも備わっているのだが、「油彩スケッチ」という技法により視覚的に未完成な、触覚的なまでの表象“未満”の絵具のひろがりが、表象しようとしている人物の感情にまでどうしても至らない、というもどかしさなんじゃないだろうか。僕にはそう思える。
Easter, 2006.
やっぱり、今回のテーマは「復活」に関わっている。この絵画もイースター、つまり復活祭を指している。*3
Double Sun, 2006.
二重の太陽、つまり光環現象。英語ではコロナ。天使の輪を示すことから「エンジェル・ハイロウ」とも呼ばれる。雲の中の水滴や氷塊により光が屈折(この場合「回折」)するとこの現象が起こるみたいです。そして光環の反対側には、「光輪」が回折により出現する。地上ではほとんど見ることはできないものの、高山などではまれに見ることができるとか。いわゆる「ブロッケンの妖怪」に、後光のような輪がつくんだそうです。先の文脈に繋げてみると、光環を見る地上の人々に、光輪はほとんど眼にすることができない。復活したイエスを、マグダラのマリアは見ることができなかったように。
Santa Barbara, 2006.
ヤン・ファン=エイクの《聖バルバラ》(1437)に倣った作品。母国であるベルギーの画家ファン=エイクのオマージュ。パリ大学には15世紀当時、聖バルバラ学院があり、フランシスコ・ザビエルはここで学んでいます。そして、宗教改革の指導者カルバンもまた、この聖バルバラ学院出身だそうです。ふしぎな縁を感じますが、タイマンスはそんな理由でこの絵画を描いたのか、否か。
Jan van Eyck, St. Barbara, 1437.
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今日の独り言
ワコウの帰りにエクセルシオルでコーヒーを飲んでいたら、グラマラスとビビの撮影を控えているらしいモデルの女の子が隣にいた。友人のモデルにワンピを借りたいとかなんとか、という会話が聞こえてくる。うーむ、どこのどいつだろう。
それ以上に、こんな聞き耳を立ててる私はきっと……。
怖くて言えない。
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